作品集

on Earth

  1. KANPAI
  2. Life on Earth?
  3. 猫の恋
  4. トルクメニスタン
  5. さらば! 魚
  6. ハッピーバースデー
  7. エレキテル
  8. 雨があがったら
  9. いつもの時間
  10. カッパ・キューカンバー
  11. 夜のみんな
  12. 桜クラクラ
  13. シャラララ

解説

薄暗がりで目が合った瞬間にすっかり僕は駄目になってしまって、爾来、君に言わせたい言葉がある。僕は君にそれをイタリーで乾杯をする際に恥ずかしがりながら言ってほしい。「へへっ、ただの乾杯だよ?」と言ってニヤニヤといやらしく僕は笑うだろう。じゃ、明日からイタリー行こう!というわけにもいかない現状が甚だ遺憾だけれども、生まれて死ぬまで骨になるまで星になるまで生きていれば、あるいは実現するかもしれない。僕はあなたの生を祈る。
初春には、発情して赤子のように鳴く猫になって欲望のままに子孫を残したいと思った。子孫も一緒にイタリーへ連れて行こう。しかし、はて、もしもトルクメニスタンに行ったら何を食べたらいいのか?という、これ以上の杞憂はないだろうという杞憂に悩み、どこにいても何を食べても僕たちの魂は震えているさ!と悟った。
また或る日、魚になればいつでもどこでも行けると気づき、息の仕方も忘れてエラ呼吸で信じていない神様に「アーメン」と祈った。本場っぽく言えば「エイメン」かしらとも思ったけれども、どうせエラ呼吸、声には出ない。君の声も忘れるだろう。いくつになったかも忘れるだろう。それでも年に一回、生まれてきてくれたこととまた生きて新しい歳を重ねてくれたことを言祝ぐだろう。
自分でも自分の「気持ち」をすべてわかりはしないもので、いつも気持ちを伝えるのは困難である。歌を詠んでも、あとになって自分で「ははぁ、こういうものか」と気づく。このように、雨があがるように気持ちも変わって、言葉の意味もいつの間にか変わってしまう。同じような朝の積み重ねなのだけれど、いつのまにやら季節はめぐり、いつのまにやら魔法は解ける。
なので、たまにはカッパになった心づもりでカッパラップでラブレターを書いてみたり、春の間抜けな陽気に身を委ねて、フワフワフワフゥー!などと言ってみたりする。
バカバカしいこと、くだらないこと、どうしようもないこと、それらすべてを抱きしめて、君と僕はシャラララなんて歌いながら死ぬまで生きるのだろう。いつかイタリーで乾杯することを夢見て、この星のすべての人の生を祝って、Cincin!(へへっ、ただの「乾杯」だよ?)

今回もstudio SIMPOでレコーディングからマスタリングまでお世話になりました。「トルクメニスタン」と「シャラララ」に、サックスでケンケンこと山本健二くん(ヤマモトケンジ&ヒズ・ラッキーフレンズ)と、トランペットでまちょみくすさん(すだじいランド、hicoband)に参加してもらいました。「KANPAI」では、石像の同期のYuyさん(Secret Messenger)に手伝ってもらいました。ジャケットはボナさんにデザインしてもらいました。写真は子どものころの藤谷と祖父です。
レコーディングには結構時間がかかって、最後は毎度のことながらコイズさんにしわ寄せが……。いつもありがとうございます。今回こそ労をねぎらってチンチンしなくては!
っていうか、前回の小咄の最後に「チンチン!」って言ってますね。すっかり忘れていましたが、前フリしてたんですね。ちなみに僕が初めて「乾杯=チンチン」と知ったのは大学生のときにこの曲を聴いたからでした。

もうひとつの地球

  1. ビートルジュース
  2. かなりサンデイ
  3. 一万年の果て
  4. 昼下がり
  5. 光あれ
  6. サンダル
  7. 青春期少女
  8. 私を拉麺小路に連れてって〜Take Me Out to the Ramen-Koji〜
  9. ハバナイスデー
  10. 私はきっと忘れます

解説

絶妙に取り上げられたゆで卵の地上のものとは思えないやわらかさ!その感触は失われた記憶をありありと甦らせた。
屋根裏部屋がまだ春だった頃、過ごしやすい気候で紅茶を飲んだある日、やわらかい「何か」に触れたのだった。それは地球上のあらゆるものよりも心地よかった。夏には夜の散歩の最中に、秋には屋根裏部屋から「何か」を思慕して空を見上げた。この広い宇宙のどこかには、「何か」があるに違いない。星が瞬いていた。真冬でもビートルジュース”Betelgeuse”の揺れる光は暖かく、道を照らしていた。
宇宙の昼間に麦酒グビ。かなりサンデイに季節は廻り、「何か」との邂逅は一万年も昔のことのように、また一万年先に起こることのように感じていた昼下がりのうたた寝で「何か」の夢を見た。この思慕、執着は名づけることができないものだから、曖昧なままで始まりも終わりもしない。その間も宇宙には光が射したり射さなかったりしていて。
広東語で歌った宇宙の夕暮れにラーメンを食べて、これぞ地球の味だ!故郷の匂いだ!と郷愁に駆られ、宛名のない手紙に「何か」への想いをしたためたが、結局、ハバナイスデーと祈るほかないのだと思う。
それでいて/それだから、私はきっと忘れます。
(『JUNGLE★LIFE』191号掲載「アーティストボイス」より)

今回も京都のSIMPOスタジオでレコーディングからマスタリングまで、すべてしました。
エンジニアの小泉さん(ママスタジヲ)は今回も大活躍してくれて、もう「プロデュース」してもらったようなもんです。
あれ?レコーディング打ち上げ飲み会まだやってないよ!! よかった、思い出して。
毎度のことながら小泉さんの寿命を削ってしまったので、労をねぎらいます。
チンチン!(イタリア語で「乾杯!」)

おなかのなかみ

  1. タクラマカン砂漠
  2. 大雨降って
  3. ベリグー
  4. 無敵の二人
  5. 魚は躍る
  6. ボレロン
  7. テクノロジー
  8. えらいこっちゃ騒動
  9. 辺りは白く
  10. テレフォン待ち
  11. おもひでロンド

解説

「どのぐらい?」と問われれば、「タクラマカン砂漠で水をあげるぐらい」と答えるけれども、それはたとえばの話で、実際にタクラマカン砂漠に君と二人で行ったら、おそらく僕は君の水をもらうはずである。そういう不甲斐なさにでこでこしてしまう日もあるが、雨上がりの往来を見れば上半身裸にベストを羽織っただけのおっさんが白い犬を散歩しているものだから、ま、いっか、とすっかり恬然、君の声、笑い方、白い手足、細い腰、まぁるいおしりなどを思い出して「ベリグッ!だ」などとひとりごっつ。
嫌いだった町を好きになったり、満員電車が平気だったりするような心持ちでいた楽勝な日々もあったが、日が翳り影が伸びて消えるようにそんな日々はあっけなく終わり、厚い雲でおぼろ月も消えてしまった。えらいこっちゃ!
頼んでもいないのに季節は巡る。年の瀬、森森と夜が更けてひとり。忘れたつもりのものたちがなぜかしら蘇る。空から降り続く雪、積もる。
そんな調子だからせっかく設定した着メロも鳴らないが、手のひらで愛が震えていたこともあったのである。「タクラマカン砂漠で水をあげるぐらい好きだ」と思った日が、確かにあったのだ。
窓を開け雨上がりの往来を見れば、相変わらず上半身裸にベストを羽織ったおっさんが白い犬を散歩していて。僕はひとり、おもひでロンドを踊るるる。

「おなかのなかみ」はそんなアルバムです。

(『JUNGLE★LIFE』175号掲載「アーティストボイス」より)

京都のSIMPOスタジオというところでレコーディングをしました。
録る前にエンジニアの小泉さん(ママスタジヲ)にいろいろとアドバイスをもらって、詰めました。
レコーディングの間、サトタツは毎日5回はフレスコ(近所のスーパー)に行っていました。
最終日、さぁ!これが終わったら飲みに行く感じだな!とみんなが暗に了解していたのに、サトタツは終わる直前にフレスコで弁当を買ってきて食べ始めました。
そのぐらいです。

元気溌剌

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